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最高裁判所第二小法廷 昭和45年(ク)220号 決定 1970年9月30日

主文

本件を仙台高等裁判所秋田支部へ移送する。

理由

記録によれば、仙台高等裁判所秋田支部は、同庁昭和四三年(ネ)第九四号第三者異議事件について、昭和四五年三月一八日控訴人である申立人の敗訴の判決を言い渡し、同月二七日、右判決正本が同人の訴訟代理人である申立代理人に送達されたところ、同代理人は、申立人から右判決に対する上告の委任を受け、同年四月一一日、上告状を同支部に提出したが、同支部は、本件上告が上告期間経過後に提起された不適法なものであるとして、頭書の上告却下決定をしたことが明らかである。しかるところ、本件申立の要旨は、申立代理人は、本件上告状を同月八日午前中に能代郵便局から書留郵便によつて発送し、通常ならば、上告期間内の同月一〇日までに同支部に到達すべかりしところ、秋田郵便局における職員の休暇戦術と称する争議行為により、郵便物の処理、配達がおくれたため、同月一一日にいたつて同支部に到達したのであり、申立人の責に帰すべからざる事由により上告期間を遵守することができなかつたものであるから、民訴法一五九条に基づく追完の事由があるというのである。

よつて按ずるに、本件申立書添付の書留郵便物受領証および秋田郵便局長名義の遅配証明書によれば、申立代理人が右主張の日時に本件上告状を発送したにもかかわらず、右主張のような事情による郵便物の遅配のため、その到達前に上告期間を経過したものであることを窺うに足り、右発送当時においてそのような事情が予測しえなかつたものと認められるならば、申立人の責に帰すべからざる事由により上告期間を遵守することができなかつた場合にあたると解される。

そうとすれば、本件上告については、期間経過後において追完をなしうる事由を認めて、これを適法な上告の申立と取り扱う余地があるにかかわらず、仙台高等裁判所秋田支部は、右追完の事由の存否について十分な職権調査を尽くすことなく、法定の期間を経過したことの一事をもつてただちに本件上告を不適法として却下したのであつて、前示上告却下決定は、ひつきよう、判決に影響を及ぼすべき重要な事項につき判断を遺脱したものといわなければならない(最高裁昭和四二年(ク)第二七〇号同四四年二月二七日第一小法廷決定、裁判集民事九四号四八九頁参照)。

本件申立は、前示決定に対し、右再審事由をもつて再審の申立をしたものと解すべきところ、仙台高等裁判所秋田支部は、本件申立をもつて、右決定に対し民訴法四一九条ノ二の規定による特別抗告をしたものと速断し、右申立に対する判断を示すことなく、本件を当裁判所に送付したものであるが、同法四二九条、四二二条一項の規定によれば、再審は不服申立のある決定をした裁判所の専属管轄に属するものであるから、同法三〇条一項に従い、本件を管轄裁判所である同支部に移送することとする。

よつて、裁判官全員の一致で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 色川幸太郎 裁判官 村上朝一)

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